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2005年11月18日 (金)

文化財解析という授業に向けて

国際日本文化研究センターの宇野隆夫さんがイミダスで考古学の説明をしている
「旧石器ねつ造事件」や「自然科学的な年代測定法」についてなど刺激的なコメントも多く、非常に勉強になるので、少しだけ紹介を
・近代考古学は19世紀中頃に古生物学や地質学から、型式学と層位学を学んだ。
(考古学の初学者が必ず耳にして取り組むこの研究法を学ぶためには生物学を知らなければならない)
・20世紀に「考古学と広義の歴史学の一部門とする」考えと、「人類学の一部門とする」考えがあった。もちろん同志社の考古学は歴史学としての立場が強い。
20世紀末にイギリスの考古学者のイアン・ホッダーが文字で書かれた記録も物質資料であり、考古学が総合学だと提言した。
これも同志社では、いうまでもなく森浩一先生がすでに「古代学」として提唱し、実践してきたことで、現在は文献史研究においても「資料学」という言い方で東大の史料編纂所などが取り組んでいる。日本国内においても同様な動きは進んでいる。
・AMS放射性炭素年代測定を巡る問題は、一番重要な資料のあつかいで見解の相違がある
・チャイルド考古学:様式編年網を基礎にした人類の発展過程と西アジアの農耕や文明がヨーロッパ社会を変革した様子を説明。鋤柄の時代のバイブルだった。
・プロセス考古学:ビンフォードらによって1960年代に新考古学運動が盛んになり成立。いろいろなプロセスが「なぜ」生じたかを客観的・科学的に説明することを重視。その研究法の開発。動物考古学などによる遺跡情報の多様化。考古学資料の数量化・空間情報の重視。計量考古学・分析考古学・環境考古学。考古学GISもその範疇だという。
・ポスト・プロセス考古学:ホッダーが1980年代に始めた象徴考古学。プロセス考古学は説明原理が経済的要因に偏っている。考古学情報の特定のかたちが特定の社会現象と対応するとは限らない。考古学の型式は社会の規範によって生じたのではなく、個々人の意志の表現の結果。空間考古学を重視し、地域の歴史伝統に注目し、様々な情報の相互関係からもっとも蓋然性の高い結論を導く。認知考古学。

初学者はこういった研究の歴史についてもしっかり学ぶ必要はある。しかし、それによって、評論家のように自分のスタイルが何にあたるかという議論は不毛である。
自分のおこなっていることが全体の中でどのような位置にあるかの感覚をもっていることは必須であるが、人間の歴史を研究することに対して、準備運動のような色分けは必要ない。言い方を変えれば、アプローチの方法が違っていても、本質を間違えなければ、すべて正しいのである。
一番重要なことは、人間の歴史に対する強い執着心だから。

・地理情報システム:空間情報をもつ各種データをコンピュータ上に表示し、空間解析をおこなうシステム。ただし、考古学(歴史学)においては、文化財情報(歴史情報)の集積と管理、考古学(歴史)情報の空間分析(考察)などに用いられつつある。

 単に遺跡の紹介と用語の説明にとどまるものではなく、考古学と社会の関係や、研究法の整理と新しい技術の紹介まで、日頃から宇野隆夫さんが言われている思いが、無駄の無い文章の中に込められており、それが宇野さんの感性で選んだ遺跡の紹介とあわせて楽しめる作品となっている。初学者必読のコンテンツである。

渡邊大門2004「中世後期における播磨国一宮伊和神社の存在形態」『中世一宮制の歴史的展開』岩田書店
渡邊大門2004「勧修寺家領摂津国小林荘について」『市史研究紀要 たからづか』第21号
高橋美都2005「国風歌舞について」『国風歌舞』国立劇場第59回雅楽公演
宇野隆夫2005「船と航海」「遣唐使船とそれ以後」『考古学ジャーナル』536
宇野隆夫2005「考古学」『イミダス2006』

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